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ハイセンスが明かす“色彩の革命”とスマートホームの未来――「RGB Mini LED Evo」とAI搭載OSが描く次世代の生活(CES2026報告)

  • 執筆者の写真: Komiya Masahito
    Komiya Masahito
  • 1月14日
  • 読了時間: 8分

世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」において、ハイセンス(Hisense)は「Innovating a brighter life(より明るい生活の革新)」をテーマにプレスカンファレンスを開催した。わずか10年前は「サウスホールの奥まった小さなブース」に位置する、業界の挑戦者に過ぎなかった同社は、現在、100インチ以上の大画面テレビおよびレーザーTV市場において世界第1位のシェアを誇る、業界のトップランナーへと変貌を遂げた。

本カンファレンスでは、業界の常識を覆す次世代ディスプレイ技術「RGB Mini LED Evo」や、テレビをスマートホームの中核へと進化させるAI搭載OS「VIDAA」の最新構想が発表された。同社がいかにして市場のゲームチェンジャーとなり得たのか、最新技術の詳細とビジネス戦略を紐解く。


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10年で「追う側」から「業界の牽引者」へ――躍進を支える3つの戦略

ハイセンスが現在の地位を確立するに至った背景には、同社が掲げる3つの明確な戦略的焦点が存在する。


1. 急速かつ戦略的なグローバル成長 

現在、同社は世界160カ国以上で事業を展開し、64以上のオフィス、37の工業団地、30のR&Dセンターを構え、北米、欧州、中東、東南アジアなどで強固な牽引力を発揮している。この成長を加速させているのが、戦略的なスポーツマーケティングである。米国のスポーツファンの約40%が「サッカーの視聴はコミュニティへの帰属意識を高める」と回答する中、同社は北米で開催される「FIFAワールドカップ 2026」の公式スポンサーを務める。3大会連続となるこのスポンサーシップに合わせ、「High RGB Mini LED TV」による圧倒的な視聴体験を提案し、スポーツの熱狂を消費者のリビングへ直接届ける構えだ。


2. イノベーションを市場に投入する「スピード」 

技術の投入を出し惜しみする競合他社とは対照的に、同社は革新的な技術をいち早く市場へ投入してきた。2022年のTV全ラインナップへのMini LED導入に始まり、2023年の輝度・精度の向上、2024年の大画面化を経て、昨年は業界初の「RGB Mini LED」をわずか200日という驚異的なスピードで市場に投入した。また、超短焦点プロジェクターやミニプロジェクターの分野においても、市場が未成熟な時期から継続的な開拓を行い、今日ではホームエンターテインメントにおいて最も急成長するセグメントへと押し上げている。同社はもはやトレンドを追うのではなく、トレンドを創り出す存在となっている。


3. テクノロジーの「民主化(手の届きやすさ)」

 同社を他ブランドと決定的に差別化しているのが、「優れた技術はすべての人のためのものであるべきだ」という信念に基づく製品展開である。一部の超プレミアムモデルにのみ最新技術を限定するのではなく、ハイエンドでローンチした機能を迅速に幅広いラインナップへと展開している。SNS上のレビューやユーザーの生の声を製品に反映させ、「イノベーションを起こし、スケールさせ、民主化する」というアプローチを徹底した結果、昨年だけでCESにおいて「Innovation Awards」や「Best of Show」など50以上のアワードを獲得し、市場からの評価を劇的に向上させている。


明るさ競争からの脱却。なぜ「色彩」に投資するのか?

ディスプレイ業界が過去10年にわたり「画面の明るさ(Brightness)」の追求に明け暮れる中、ハイセンスは異なるアプローチを採用し、「忠実度(Fidelity)、範囲(Range)、リアリズム(Realism)」に多大な投資を続けてきた。その理由は、色にはピクセルやプロセッサーのスペックを超えて人間に語りかけ、感情を喚起する強力な「力」があるためだ。

映画業界において、色は物語を決定づける極めて重要な要素である。例えば『オズの魔法使い』では、ドロシーの靴を画面に映えさせるためにルビー色に変更し、魔法の国を鮮やかな色彩で表現した。また『インサイド・ヘッド』では感情を色で巧みに表現し、『アバター』の未知の世界観は青と緑で、『マトリックス』はコンピュータコードを連想させる薄緑で、『バービー』は世界観を示す美しいピンクで彩られている。このように色は、セリフが発せられる前から視聴者の感情をコントロールし、記憶に深く刻み込まれる。

画面が単に明るくシャープになるだけでは、映像は冷たく、愛着の湧かないものになりかねない。同社は、真の色彩表現によって視聴者が「ただ見るだけ」ではなく「物語の一部になる」体験の創出を目指しており、この独自の哲学が新たな「多原色(multi-primary color)技術」の誕生へと繋がったのである。


限界を突破する新技術「RGB Mini LED Evo」の全貌

同カンファレンスにおける技術面の最大のハイライトは、世界初の4原色バックライトアーキテクチャを搭載したプロフェッショナルグレードのディスプレイ技術「RGB Mini LED Evo」の発表である。これは、従来のMini LEDやQLED(量子ドット)が抱えていた色純度や明るさの限界を打ち破るものであり、以下の3つのステップにおける「革命」で構成されている。


1. 光源の革命:「スカイブルー」がもたらす色域の拡大 

心臓部には「RGB Mini LEDチップ 2.0」が搭載されている。最大の特徴は、従来の赤・緑・青の3原色に加え、第4の原色として「スカイブルー(Sky Blue)」を追加した点である。これにより、ディスプレイ業界の3大課題であった「色にじみ(Color bleeding)」「ハロー現象(Hollowing)」「色シフト(Color shifts)」を解決した。結果として、業界最高基準であるBT.2020色域のカバー率を前例のない110%へと押し上げ、光、色、明るさの2次元および3次元的な精密制御を実現している。


2. プロセッサーの革命:「Hi-View AI Engine RGB」 

複雑な4原色LEDの光学的ミキシング計算を高度に処理するため、アップグレードされたAIライト・カラーコントロール・プロセッサー「Hi-View AI Engine RGB」を搭載した。この業界屈指の強力なプロセッサーが数万もの分割ゾーンを緻密な精度で指揮し、バックライト全体で色彩と明るさの完璧な同期を実現する。


3. カラーマネジメントの革命:AIによるスタジオレベルの補正 

プログレードの3D LUT技術を採用し、映画スタジオやクリエイターの本来の意図を忠実に再現する。さらに、世界初となる「AIカスタマイズモード」を実装し、ユーザーがわずか数ステップの操作でスタジオレベルのキャリブレーションを自宅で設定できる環境を構築した。これにより、テレビは単なる家電から「プログレードのリファレンスモニター」へと進化を遂げた。


ブルーライト削減と省エネの両立 

技術的な優位性は画質向上に留まらない。従来のソフトウェア処理によって画面を暗く・黄色くするブルーライト軽減機能とは異なり、スカイブルーLEDを用いた光源レベルの解決策により、QD-LED(量子ドットLED)と比較して有害なブルーライトを60%、従来のMini LED比で75%削減した。同時に、純粋な発光効率の向上によりQD-OLEDと比較して消費電力を30%削減することに成功しており、画質、アイケア、環境配慮のすべてを高次元で両立させている。


UXシリーズから巨大Micro LEDまで、圧倒的なハードウェア展開

この最先端の「RGB Mini LED Evo」は、一部のハイエンドモデルだけでなく幅広いシリーズに搭載される。普及帯のシリーズ7および8から、プレミアムなシリーズ9、そして画質の頂点に君臨するフラッグシップ「UXシリーズ」(今月発売予定)に至るまで、同社特有の「技術の民主化」が実践される。

また、レーザーディスプレイ技術においても新製品が発表された。2026年フラッグシップレーザープロジェクター「XR10」は、6,000ルーメンの高輝度と4Kトライクロマティック(3原色)レーザー投影を備え、特別に調整されたオーディオシステムとともに最大300インチの没入感あふれるシネマ体験を提供する。さらに、技術的マスターピースとして、世界初の原色Micro LEDを採用し、CES 2026 Innovation Awardを受賞した163インチの「MXシリーズ」も披露され、次世代ディスプレイ市場における全方位的なリードを見せつけた。


テレビは「家のOS」になる。AIが駆動する「VIDAA」の進化

ハードウェアの革新と並行して、スマートホームの未来を担うソフトウェアの進化も示された。現在、同社のスマートTV向けOS「VIDAA」は世界で5,000万以上の家庭、180カ国以上で利用されており、自社だけでなく400以上の他社ブランドにも採用される世界最速レベルのプラットフォームへと成長している。

「今日が従来の意味での『テレビ』を見る最後の日になるだろう」という宣言のもと発表された新プラットフォーム「Welcome Home」は、テレビを家庭内の全デバイスを接続するハブ(中心)へと昇華させる。このAI主導のシステムは、従来のプロファイル選択や煩雑なメニュー、スクロールを排除し、「コンテンツファースト」のパーソナライズされた体験を提供する。

具体的には、以下のようなAIアシスタント機能によるシームレスな生活連携が想定されている。

  • 朝のパーソナルダッシュボード:起床時にテレビが起動し、家族それぞれのニーズに合わせて、天気予報、交通情報、その日のヨガクラスやスポーツのハイライトなどを一目で確認できる画面を提供する。

  • キッチン家電との連携:テレビで料理番組を見て気に入ったレシピをスマート冷蔵庫のディスプレイに直接転送できる。キッチンでの調理中も番組の視聴を継続でき、料理が完了すればスマートオーブンが通知を行う。

  • デュアルスクリーン通知:パートナーと映画を鑑賞している最中でも、AIがユーザーの嗜好を把握し、応援しているサッカーチームにゴールが生まれた瞬間を、映画の視聴を妨げることなく画面上に通知する。

  • 就寝前のホームオートメーション:夜になるとテレビが自動で部屋の照明を落とし、翌日のアラームをセットする。さらに、エネルギー効率と生活リズムを考慮し、洗濯機を早朝のサイクルに設定するなど、家全体の管理を行う。

また、Microsoft(マイクロソフト)との新たな協業により「Copilot」が統合されたほか、コンソール機なしで「Xbox Cloud Gaming」と同等のゲーム体験が可能になることも明かされた。

技術を複雑化させるのではなく、「シンプルに機能し、ユーザーが家族との時間を最大限に楽しめるようにする」ことこそが、ハイセンスがコネクテッドホームで目指す究極の目標である。

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