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【シンガポール国立大学発】物理学を起点に予知保全の常識を覆すーAccuPredictがもたらす製造業の革新とパラダイムシフト

執筆者の写真: 安田 和貴/Yasuda Kazuki
安田 和貴/Yasuda Kazuki
8月7日
読了時間: 7分

更新日:8月17日


製造業において、予期せぬ機械のダウンタイムは生産性低下やコスト増大に直結する深刻な課題である。近年、この課題を解決するためにAIや機械学習を用いた予知保全が注目を集めているが、事前のデータ蓄積に膨大な時間を要することや、不具合の根本原因の特定が困難であるという実情がある。こうした背景の中、シンガポールを拠点とするスタートアップ「AccuPredict」は、AIに「物理学」のアプローチを組み合わせる独自の手法で、予知保全の領域に革新をもたらしている。同社のサービスは過去5年間で顧客維持率100%を誇り、米国のFortune 500企業を中心に高く評価され、世界展開を加速させている。今回は、インド、日本、中国、シンガポールで38年に及ぶビジネス経験を持つ共同創業者兼CEOのMilind Yedkar氏に、AccuPredictの画期的な事業内容について伺った。


「機械は永遠に動き続ける」物理学ベースのアプローチとは

当社のミッションは「機械は永遠に動き続ける(Machines run forever)」という非常にシンプルなものである。適切に設計された機械は、予期せぬ停止を起こすべきではないと私たちは強く信じている。 現在の予知保全市場では、AIや機械学習を用いたパターンマッチングが主流となっている。しかし、この手法は「過去に同じ振動パターンがあった際に部品が壊れたため、部品を交換してください」と予測するだけで、なぜその部品が壊れるのかという根本原因までは教えてくれない。これに対し、当社は物理学を分析の出発点とし、そこにAIを組み合わせている。当社のアルゴリズムは、潤滑油の不足や過剰、芯出し不良、アンバランス、基礎不良など、故障を引き起こす根本原因を正確に特定することが可能である。原因を特定して対処することで再発を防げる点こそが、世界中の競合他社と当社を隔てる決定的な違いである。


過去データ不要・予測精度97%を誇る圧倒的優位性

過去データ不要・予測精度97%を誇る圧倒的優位性 当社が顧客に提供する技術的なメリットは、大きく4つの優位性にまとめられる。


  1. 相関関係ではなく根本原因の特定:単なるパターンの相関ではなく、前述のように故障の具体的な原因を提示し、問題の根本的な解決を導く。

  2. 過去データの蓄積が不要:機械学習のように分析開始までに3〜6ヶ月分のデータを必要としない。医師がX線写真を見て即座に骨折の有無を診断するように、当社のエンジニアは機械の重要なポイントの振動をわずか1分間測定するだけで、機械のどこに異常があるかを即座に診断できる。

  3. 100日前の早期警告:問題が発生する数日前ではなく、100日前に警告を出すことで、機械の故障を防ぐだけでなく、部品の寿命を延ばすことが可能である。

  4. 極めて高い予測精度:当社の予測には、AI特有の偽陽性や偽陰性といった誤報がない。これは、光を通せば物質の成分が正確にわかる分光器(スペクトロスコープ)と同じ仕組みである。物理的な性質に基づいているため、アルゴリズムは問題を正確に特定できる。


機械学習ベースの競合に対するAccuPredictの強み
機械学習ベースの競合に対するAccuPredictの強み


導入事例:定期メンテナンスの停止が生み出す劇的なコスト削減

当社のソリューションは、消費財、飲料、製薬、自動車、発電、石油・ガスなど、業界を問わずあらゆる種類の機械に適用可能である。ある消費財メーカーの事例では、故障しやすい2台の機械に25個のセンサーを取り付けた。3ヶ月のパイロット期間中、顧客にはメーカー推奨の部品交換などを含めた定期的なメンテナンスを停止いただき、当社が指示した必要な対応のみを実行した結果、機械の故障は即座に減少し、修理時間、スペアパーツの消費、そして残業時間の大幅な削減に成功した。現在は同顧客内でグローバル展開へと移行している。


また、自動車会社との協業では、インターネットに接続せずとも車載の小さなアルゴリズムで走行時の異音の原因を音響センサーで特定し、整備工場の生産性を向上させている。さらに鉱山業界では、パイプラインの詰まりや、肉厚減少による破裂予測など、多様な課題解決にも当社の物理学アプローチが応用されている。


万が一、90日間のパイロット期間で機械の信頼性向上の基準を達成できなければ、無条件で全額返金する保証も設けている。これは「物理学は失敗しない」という絶対の自信があるためである。

AccuPredictの性能保証
AccuPredictの性能保証


シンプルなダッシュボードと伴走型のサポート体制

当社のシステムは、現場の担当者に負担をかけないよう設計されている。毎日提供されるダッシュボードは非常にシンプルで、「ブロワーを清掃してください」「バランシングを計画してください」といった直感的なメッセージが表示される。これは経験4〜5年の担当者であれば容易に対応できる内容である。また、一度の通知で複数の問題を特定できるため、何度も機械をシャットダウンする手間を省くことができる。


サポート体制としては、オンサイトとオフサイトのチームが一体となって機能するよう、週に1回、30分のミーティングを実施している。さらに、緊急時にはLINEやWhatsAppなどのメッセージングアプリを使用して即座に連携できる体制を整えており、常に顧客と伴走しながら機械の最適化を進める。


サステナビリティへの貢献も大きな特徴である。例えば、機械の設置上の問題を取り除くことで振動を15 mm/sから4 mm/sに抑えることができれば、振動による無駄なエネルギー損失を防ぐことができる。結果として、機械の消費エネルギーを10〜30%確実に削減することが可能である。

AccuPredictのダッシュボード一例
AccuPredictのダッシュボード一例


日本市場への本格参入と日本企業の競争力強化に向けて

私たちの目標は、日本の製造業が再びグローバルな競争力を高められるよう支援することである。そのために、2026年内には日本に拠点を設立し、現地のエンジニアや技術者を採用する計画を進めている。


日本国内にはいくつかの競合他社が存在するが、当社のソリューションには明確な優位性がある。一部のAI/MLベースのサービスは過去のパターンに依存しているし、大手企業からのスピンオフが提供する音響ノイズセンサーを用いたソリューションは、導入コストが非常に高く、設定が複雑で運用までに多大なサポートを要するという課題を抱えている。また、オイルテストを用いた手法は、すでにダメージが発生した「後」に粒子を検知するものであり、どこで何が原因で損傷が起きているのかを特定できない。物理学を用いて事前に根本原因を突き止める当社のアプローチは、これらとは一線を画している。


日本での実績も着実に積み上がっている。すでに名古屋の企業とパートナーシップを締結し、名古屋港の大型コンプレッサーの案件では、わずか1回の測定で問題を正確に特定し、現場のメンテナンス担当者からその精度を高く評価された。現在は発電会社とも連携し、水門のブロックを引き起こす原因の特定などにも取り組んでいる。 当社と協業いただく日本の皆様には、日本語化された分かりやすいダッシュボードを提供し、日本標準時で日本のエンジニアと直接コミュニケーションを取れる環境を用意する。「シンガポールの誰かと話さなければならない」といった心配は一切不要である。日本の製造業の皆様の長期的なパートナーとして、共に機械の信頼性向上に取り組めることを楽しみにしている。


■ 終わりに

高度な物理学とAIを融合させたAccuPredictの予知保全ソリューションは、製造業における長年の課題である「予期せぬダウンタイム」を撲滅するだけでなく、メンテナンス工数の劇的な削減や、10〜30%の省エネルギー化という副次的効果も生み出している。過去データを必要とせず、導入初日から根本原因を特定し、AIの弱点である誤報を排除した同社の技術は、あらゆる産業のオペレーションにパラダイムシフトをもたらす可能性を秘めている。年内の日本法人設立に向けた動きも本格化しており、日本の製造業の競争力を押し上げる強力なパートナーとして、同社の今後の展開に大きな期待が寄せられる。


インタビュー企業概要

企業名: AccuPredict Services Pte Ltd

会社HP: https://accupredict.io/ ※インタビュー企業との連携や商談をご希望の方は当メディア運営企業のThird Ecosystem, incもしくは直接インタビュー企業までご連絡ください。


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