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日仏のイノベーションの架け橋:SusHi Tech Tokyo 2026で存在感を示すフランスのディープテック・スタートアップ

Miki Sadinov
9月3日
読了時間: 9分

エコシステムを繋ぐ:日仏のグローバル・イノベーションを牽引する La French Tech Tokyo(フレンチテック東京)


世界のテクノロジー市場において、フランスは近年、圧倒的なイノベーション大国としての地位を確立している。フランスのスタートアップ・エコシステムは、2000年以降で110万件以上の雇用を創出し、現在は3万3,000社以上のスタートアップ、35社のユニコーン企業を擁するまでに急成長を遂げた。この発展を支えるのが、総額540億ユーロ(約8.6兆円)に及ぶ国家投資計画「France 2030」や、急成長企業を国策として支援する「French Tech Next 40/120」といった、極めて強力な官民のバックアップ体制である。


グローバルテクノロジーイベントである「SusHi Tech Tokyo 2026」の2日目、フランスパビリオンはMeteor Stageにて、厳選されたスタートアップによるピッチセッションを開催した。アジアにおける14の公式コミュニティの一つである「La French Tech Tokyo(フレンチテック東京)」のコーディネートのもと行われたこのセッションでは、フランスパビリオンの出展企業の一部であり、当日の公式スケジュールに名を連ねたAbbeal、Cypheme(サイフェーム)、ファシリティジャポン株式会社(FACIL'iti)、Erase4Good(LE GSM)、Orikio(オリキオ社)、Ucaya(la Vitre)、YellowScan(イエロースキャンジャパン株式会社)などをはじめとする代表団のうち、特に先進的な5社に焦点を当て、人工知能(AI)、ハードウェアデータセキュリティ、高齢者ケア、テレプレゼンス、気候変動モニタリングなどの最先端分野で現代の重要な課題を解決するピッチが展開された。


La French Tech Tokyo(フレンチテック東京)は、日仏の双方向を結ぶ極めて重要な架け橋としての役割を担っている。選挙によって選ばれた9名のIT・スタートアップ専門家がボランティアで運営を行い、現在約900名の会員をサポートしている。フランスの起業家、日本の投資家、そして日本を代表する大企業とのパートナーシップ構築を後押しすることで、Back Market(バックマーケット)、Deezer(ディーザー)、Exotec(エグゾテック)といった高名なフランス発ユニコーン企業の日本市場における堅実な事業展開を支えている。



1. Cypheme(サイフェーム):AIを駆使し世界の模倣品被害を防ぐ偽造防止ソリューション

模倣品(コピー商品)による被害は、特にインドや中国などの急成長市場において、グローバルブランドに毎年数十億ドルもの莫大な損失をもたらしている。従来のホログラムやQRコードといった偽造防止策は、今や犯罪グループによって容易に複製されてしまう。これに対しCyphemeは、固有の化学的特性と先進の人工知能(AI)を組み合わせた、ゲームチェンジャーとなる偽造防止ソリューションを開発した。

  • 最先端技術: 特殊な化学プロセスを用いて生成された、完全にランダムかつ極めて高いセキュリティを誇る粘着ステッカーを製品パッケージに貼付する。この化学パターンは分子レベルで唯一無二(ユニーク)であり、絶対に複製不可能な「物理的指紋」として機能する。

  • AIによる瞬時判定: 消費者や物流担当者は、市販のスマートフォンのカメラでステッカーの写真を撮るだけでよい。CyphemeのAI画像認識技術が、そのステッカーが「本物」か「偽物」かを一瞬で高精度に判別する。

  • Cyphemeによる契約保証: 同社によると、自社の技術を導入した製品が万が一偽造された場合には、契約に基づく返金保証(マネーバック・ギャランティ)を提供するとしている。

  • 追跡と摘発: 模倣品が検知された場合、独自のネットワーク追跡技術により、偽造グループの流通網をマッピングして製造工場の住所まで特定する。法執行機関と連携し、工場の摘発や犯罪グループの逮捕までを包括的にサポートする。

  • グローバルな評価と実績: 同社のAI技術「Vrai AI」は、2025年に国連大学(United Nations University)関連のAIアワードを受賞し、偽造防止分野における国際的な認知度を高めている。同社は現在、180カ国以上で事業を展開し、数百万件に及ぶ模倣品の排除に貢献していると報告している。


2. Erase4Good(LE GSM):データ消去の完全証明で電子機器の循環型社会を実現

電子機器のリサイクルや循環型経済(サーキュラーエコノミー)を推進する上で、最大の障害となっているのが個人情報や機密データの漏洩リスクである。統計データによると、消費者の約37%〜69%がデータセキュリティへの懸念から端末の回収や買い替えプログラムの利用を避けており、その結果、世界の電子機器の回収・リサイクル率は20%未満に留まっている。創業者リオネル・ユザン氏が率いるLE GSMは、画期的なハードウェア・データ消去ソリューション「Erase4Good」でこの課題を根本から解決する。

  • 非破壊型の完全消去: 従来の物理的な破砕(シュレッダー処理)とは異なり、デバイスの物理的な基盤や部品に一切の損傷を与えることなく、内蔵されたフラッシュメモリ内のデータを完全に復元不可能な状態にする。

  • 故障端末にも対応する柔軟性: このハードウェアシステムは、正常に動作(通電)するデバイスだけでなく、電源の入らない故障した端末に対しても完全に機能する。

  • データ消去証明: データ消去が完了したデバイスには、データが完全に消去され、第2の製品寿命(セカンドライフ)を送る準備が整ったことを証明する独自のデータ消去証明書が発行される。これにより、廃棄されるはずだった端末を価値あるセカンドライフ資産へと転換する。

  • 環境と調和するセキュリティ: 機密データ漏洩の懸念を完全に払拭することで、電子機器のリサイクル率を大幅に向上させ、希少な資源の再利用と環境保全に貢献する。


3. Orikio(オリキオ社):音響解析AIで高齢化社会を支える「見守り」システム

世界に先駆けて超高齢化社会を迎えた日本において、介護現場の人手不足や、高齢者の「転倒」および一人静かに居室内で発生する突発的な身体的異変への対応は、極めて深刻な課題である。Orikioは、カメラなどの視覚的デバイスを使用せず、プライバシーに配慮した音響解析AIによる自律型の見守りシステムを提供する。

  • 音響シグネチャの検出: 転倒、助けを求める叫び声、嘔吐などの突発的な事故や異変が発生した際、その状況には特有の「音の波形(音響シグネチャ)」が存在する。OrikioのAIは、これらの音のパターンを瞬時に識別し、理解する。

  • ウェアラブル不要・カメラ不要のハードウェア: 小型軽量なデバイスを居室のコンセントに差し込むだけで設置が完了する。高齢者がセンサーを身に着ける必要がなく、カメラも一切使用しないため、プライバシーに配慮しながら24時間稼働する。

  • タイムリーな状況通知: 異変を検知した瞬間、介護スタッフ、家族、または救急サービスへ即座にアラートを送信する。遠隔で状況を把握し、一分一秒を争う状況下で「必要な場所へ、必要なタイミングで」駆けつけることを可能にする。

  • 圧倒的な導入実績: 現在、数千室規模(4,500室以上)で導入が進んでおり、音響認識を活用した介護・ヘルスケア分野のグローバルリーダーとして、深刻な介護人材不足に悩む日本市場での展開を本格化させている。


4. Ucaya(la Vitre):等身大テレプレゼンスが変革するリモートコラボレーション

ハイブリッドワークが浸透する現代において、従来型のビデオ会議ツールは、カレンダー予約の手間、接続URL発行の煩わしさ、画面越し特有の距離感、言語の壁といった課題を抱えている。Ucayaは、会議室の一部として「自然に溶け込む」ように設計された等身大テレプレゼンスプラットフォーム「la Vitre」(ラ・ヴィートル)により、これらの物理的・心理的障壁を取り払う。

  • 「ノックして話しかける」シームレスな対話: 会議用リンクの発行やバーチャル待機室は不要である。等身大ディスプレイの前に立ち、画面をノックする感覚で、即座かつセキュアにピア・ツー・ピア(P2P)での等身大コミュニケーションが開始する。

  • 40カ国語以上のリアルタイム翻訳: 言語の壁を越え、異なる言語で話すメンバー同士がリアルタイムに翻訳された音声と字幕で意思疎通を図ることができる。

  • 実証された圧倒的なビジネスインパクト:

    • アパレル・製造業での導入実績: 大手下着(ランジェリー)メーカーにおいて、フランス本国のデザインチームと生産工場を等身大ディスプレイで常時接続。等身大でのリアルタイムなフィードバックと意思決定を可能にしたことで、製品サンプルの修正から最終ブランド承認までのプロセスを2週間短縮することに成功した。

    • 高齢者のコミュニケーション向上: 77歳以上の高齢者を対象とした実証実験において、一般的な画面構成のビデオ会議と比較して、「la Vitre」は圧倒的な使いやすさ、利用継続への強い意欲、高いエンゲージメントを記録した。

  • SaaSとハードウェアのハイブリッド: 専用のコンパニオンアプリを使用することで、複数拠点の一斉接続、画面上への手書きアノテーション(注記)、受付案内用のインタラクティブな「アバターモード」などを直感的にコントロールできる。


5. YellowScan(イエロースキャンジャパン株式会社):気候変動への適応を加速するドローン搭載型水深測量LiDAR(Bathymetric LiDAR)

気候変動の加速に伴い、世界各地で豪雨による洪水の多発や河川の流路変化など、生活インフラや水辺の生態系を脅かす深刻な事態が発生している。これらを防ぐための環境モデル構築や正確な地形データの取得は急務であるが、従来の地上測量や有人航空機による観測は、多大なコストと危険を伴い、アクセス困難な地形では実施が不可能な場合もあった。YellowScanは、ドローン搭載型の水深計測(Bathymetric)LiDARにより、この測量の課題を解決する。

  • 高性能ドローンへのシームレスな統合: 市販の産業用ドローンに容易に搭載できる、超軽量かつ堅牢な三次元レーザースキャナを開発。

  • 水陸両用での高精度3Dモデル化: ドローンを上空で飛行させるだけで、水面上の地形(堤防、海岸線)と水面下の地形(河床、海底地形)を同時にスキャン。極めて高精度な3D点群データを一挙に生成する。

  • 劇的なコスト・時間の削減: 従来の測量船の派遣や専門の潜水測量チームの編成に比べ、極めて短い時間かつ数分の一のコストで、研究・設計に耐えうる高密度な空間データを取得できる。

  • 意思決定者への迅速なデータ提供: 取得された地形データは、各国の政府、自治体、民間インフラ開発企業に提供され、災害予測シミュレーション、治水計画の策定、港湾整備などを人命を危険にさらすことなく安全かつ迅速に実行可能にする。



共同イノベーションの未来を拓く

SusHi Tech Tokyo 2026におけるフランス企業のピッチセッションは、日仏の技術的架け橋がこれまで以上に強固で重要なものとなっていることを証明した。両国は、急速に進む超高齢化社会、循環型社会の構築、サプライチェーンの安全性確保、および気候変動に伴う環境リスクなど、極めて共通性の高い現代的課題に直面している。


非接触型の音響解析AIや高度な水深測量技術など、実用的なディープテック・ソリューションを提供するフランスのスタートアップ群は、これらの共有された課題に対して具体的な答えを示すものである。La French Tech Tokyo(フレンチテック東京)の支援のもと、この両国のイノベーション・エコシステムは今後も国境を越えた技術提携を加速させ、持続可能な成長と安全保障に向けた相互の発展に寄与していくことが期待される。

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