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トヨタが挑むエネマネ新規事業、現場発「工場空調のスマホ管理」という最適解

  • 執筆者の写真: 安田 和貴/Yasuda Kazuki
    安田 和貴/Yasuda Kazuki
  • 3 日前
  • 読了時間: 7分

製造業におけるカーボンニュートラルへの対応やエネルギーコストの高騰が深刻化する中、大規模工場の省エネ化は喫緊の課題となっています。特に、工場内で大きな電力を消費する空調設備の最適化は、現場の快適性とエネルギー削減という相反する目的を両立させる必要があり、多くの企業が頭を悩ませています。

こうした課題に対し、自社の製造現場で培ったノウハウを武器に、革新的な工場空調アプリを開発したのがトヨタ自動車株式会社です。本記事では、同社が新規事業として展開するソリューションの全貌や、自社工場での導入成果、そして今後の展望について、元々はモノづくり技術本部で自社工場内の空調改善に取り組み、現在はその知見を活かして本新規事業を牽引されているトヨタ自動車株式会社の加藤氏に伺いました。

 

巨大企業トヨタにおける、スモールチームでの挑戦

トヨタ自動車という数万人規模の従業員を抱える巨大企業でありながら、この工場空調アプリは社内のアイデア公募から生まれた新規事業です。現在、事業開発部の数名の少数精鋭チームで、スタートアップのような機動力を持って機敏に推進しています。私自身、元々はモノづくり技術本部に所属しており、自社の自動車工場における空調改善に取り組んでいました。そこで培った実践的なノウハウを、社外のお客様にもお役立ていただけるのではないかと考え、現在のようにソリューションとしての販売を推進するに至りました。

 

現場のリアルな課題から生まれたソリューション

私が自社工場の空調改善に取り組む中で直面した課題は、現場における空調の「切り忘れ」がなぜ常態化してしまうのかという根本的な問いでした。大規模な工場では、空調管理において「現場からの設定変更が非常に困難である」という特有の課題が存在します。天井に無数の空調ダクトが入り乱れているため、目の前のダクトがどの空調機に繋がっているのか作業者には把握できません。さらに深刻なのは、現場の物理的なハードルです。自分の作業エリアを冷やしている空調機のスイッチが遠く離れた場所にあったり、物流エリアを大きく迂回しないとスイッチに辿り着けなかったりするケースが珍しくありません。毎日の作業が終わった後に、わざわざ遠くまで空調を切りに行くことは現実的に難しく、結果として切り忘れが発生してしまうのです。


また、省エネを推進したい管理者側と、快適に作業をしたい現場の利用者の間で利害が対立し、勝手な設定変更が現場からの苦情に繋がってしまうという問題もありました。そこで私たちは、現場の快適性を維持したまま、無駄なく省エネを実現できるソリューションを開発いたしました。


空調ダクトが入り乱れる工場(生成AIによるイメージ画像)
空調ダクトが入り乱れる工場(生成AIによるイメージ画像)

直感的な操作とあらゆる設備への高い汎用性

私たちのアプリは、現場の課題を解決する以下の3つの大きな特徴を備えています。


  • スマートフォンによる直感的な設定変更:現場でスマートフォンのカメラを空調ダクトに対してかざすと、対象のダクトが系統ごとに色分けされて画面上に表示され、その場で空調のオンオフや設定条件の確認が可能です。自分が操作した際の影響範囲が視覚的にわかるため、どこまで調整してよいのかを作業者が自ら判断できます。

  • きめ細やかな自動オンオフ機能:カレンダータイマーによる非稼働時間の自動オフに加え、温度と連携した制御が可能です。例えば、「朝の時点で23度を超えていればオンにするが、下回っていればオンにしない」といった柔軟な自動制御により、快適さを損なわず無駄を削減します。

  • あらゆる空調機への後付け導入:トヨタのような大規模工場では、増築を繰り返すことで多種多様なメーカーの空調が導入されています。本アプリでは空調メーカーを問わず、大型空調機から中小型のパッケージ型空調機まで、ほぼすべての既存機種に導入が可能です。


ARを使った空調ダクトの見える化イメージ(実際のアプリ画面とは異なります)
ARを使った空調ダクトの見える化イメージ(実際のアプリ画面とは異なります)

 

現場の運用を最適化する多彩な機能

機能面においても、現場の作業者や管理者が使いやすいよう、スマートフォンの特性を活かした以下の5つの多彩な機能を実装しております。


  • AR機能:現場でスマートフォンのカメラをかざすと、AR(拡張現実)によって空調の適用範囲が画面上に可視化され、影響範囲を確認しながらそのまま直感的に操作が可能です。

  • マップ機能:工場の建屋マップを画面に表示し、俯瞰的な視点から直感的に対象エリアの空調操作を行うことができます。

  • リスト機能:システムに登録された空調機を一覧で表示し、工場全体の稼働状況を迅速に把握することが可能です。

  • 空調機操作機能:アプリの画面上で、直接空調機の電源のオン・オフや温度設定の変更をスムーズに行えます。

  • スケジュール機能:稼働日や非稼働日、時間帯に応じた細やかなスケジュール設定を行うことで、毎日の手動操作を不要にし、自動的なオン・オフを実現します。


工場空調アプリの機能
工場空調アプリの機能


トヨタ自動車工場での導入事例:月額約15.7万円エネルギー費削減

実際に、当社工場にある部品製造現場へ導入した事例をご紹介します。この現場では、中央監視で遠隔操作される15台の大型空調機(エアハン)と、現場のリモコンでしか操作できない13台の中小型空調機が混在しており、空調全体の一括管理が不可能な状態でした。


本アプリを導入し、遠隔操作ができなかった空調機を含めて一括管理できるように対応した結果、空調機の稼働状況が詳細に可視化されました。その結果、夏休み期間中や土日の消し忘れ、工場が停止している夜間の不要な稼働など、多くの無駄なエネルギー消費が浮き彫りになったのです。


これらをアプリの自動制御機能を用いて適切にオフにした結果、空調機4台の対象エリアだけでも1ヶ月あたり15.7万円の省エネ効果を確認し、年間換算では約90万円のエネルギー費用削減が見込めることが実証されました。また、作業者が遠くの空調スイッチまでわざわざ切りに行く手間が省けるため、現場からも自動化による恩恵を高く評価していただいております。

 

自動車業界を超えた展開とグローバルな環境課題への挑戦

現在は、当社のグループ会社を中心に導入を進めつつ、自動車組み立て工場や自動車部品メーカーなど、同様の課題を抱える大規模な工場へご提案を行っています。また、自動車関連の工場だけでなく、あらゆる工場で同様の課題が発生しているため、今後は様々な業界の工場へも広げていきたいと考えています。


さらに、私たちの視野は日本国内に留まりません。環境意識やCO2排出削減への要求が非常に高い欧州市場への展開を視野に入れており、今後はアプリの多言語対応も考えています。展開も視野に入れています。私自身を含め、事業開発部の数名という少人数のチームで推進しているプロジェクトではありますが、製造現場から生まれたこの実践的な技術を広く社会へ還元し、産業界全体の省エネ化に貢献していきたいと考えております。

 

パートナー企業との協業による、グローバルな環境課題への挑戦

今後のさらなる事業拡大に向けて、私たちは多様な形で協業できるパートナー企業様を積極的に探しております。自社の製造現場で本アプリの導入をご検討いただける企業様はもちろんのこと、共にお客様へ提案・販売を推進していただける企業様や、空調制御から派生した新たな省エネソリューションを共に創り上げていけるパートナー様との出会いを期待しています。


■ 終わりに

製造現場のリアルな課題と徹底的に向き合い、自社のノウハウを結集させて誕生したトヨタ自動車の工場空調アプリ。単なるコスト削減ツールに留まらず、管理側と現場の対立を解消し、快適性と省エネを両立させる画期的なソリューションと言えます。既存のあらゆる設備に後付け可能であるという高い汎用は、自動車業界のみならず様々な製造現場において大きなポテンシャルを秘めており、工場のカーボンニュートラル推進に大きく寄与していくことが期待されます。

 

インタビュー企業様

企業名: トヨタ自動車株式会社

ご担当者:加藤 和範様(エナジ-ソリュ-ション事業部 事業基盤開発室)

※紹介企業との連携や商談をご希望の方は弊社までご連絡ください。

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