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AIによるドローン終末誘導: AIはどのようにドローンの戦いを変えるか(ウクライナ・ロシア戦争)

  • 執筆者の写真: 安田 和貴/Yasuda Kazuki
    安田 和貴/Yasuda Kazuki
  • 7月23日
  • 読了時間: 9分

更新日:7 日前

ウクライナのFPVドローンに、小さなAIモジュールが載りはじめている。操縦者が目標を指定してロックすると、そこから先、最後の400〜500メートルは機体が自分飛行していく仕組みである。手動のFPV(First Person View:操縦者がゴーグルで機体の視点を見ながら飛ばす小型攻撃ドローン)では通信を妨害されると墜落していたが、AIを搭載することで終末誘導が可能となり、目標に突入することができる。ウクライナの前線におけるAI活用に関して深堀する。


終末誘導としてのAIの活用

ウクライナ最大級のドローンメーカーの一つVyriy(ヴィリー)は、2025年9月、キーウの自律技術企業ザ・フォース・ロー(The Fourth Law)と組み、FPV機「Vyriy-10」に終末誘導モジュール「TFL-1」を積んで量産を始めた(ウクライナ・プラウダ、2025年9月15日)。別名、カミカゼドローンとも呼ばれている。

使い方は次の通りである。操縦者はこれまで通り機体を手動で飛ばし、目標を映像で見つける。目標を指定してロックすると、機体は自律モードへ切り替わり、そこから先は自分で目標を追って突入を完了する。操縦者の仕事は、そこで終わる。

機体側で働いているのはマシンビジョン、つまり映像から対象を捉え続ける画像認識である。United24 Mediaは、TFL-1がマシンビジョンにもとづく「撃ちっ放し(fire-and-forget)」方式で、飛行の終末段階を引き継いで目標にロックし、強い妨害下でも打撃すると伝えている。開発には2年近くを要し、NATOの装備品コード(NATOコード化)も取得済みだという。

自動化されている区間は、思うより狭い。The New Voice of Ukraineによれば、TFL-1が機体を導くのは飛行の最後の400〜500メートルだけである。発進から接近までは、これまで通り人が飛ばす。CSIS(米戦略国際問題研究所)のKateryna Bondarも、2025年3月の報告で、自動化されているのは終末誘導であり、発進から帰還までの大部分はなお手動だと記している。つまりここで起きているのは、兵器そのものの自律化というより、通信が切れた後の数百メートルを機械に任せるという限定的な自動化である。




通信遮断への対処とクルーズコントロール

なぜ最後の数百メートルなのか。そこが、これまで最も多くの機体を失ってきた区間だからである。

ロシアの電子戦や地形による「電波の影」で操縦信号が切れると、手動のFPVはその瞬間に映像を失う。操縦者から見れば画面が消え、機体はそのまま墜ちてしまう。終末誘導が働いていれば、通信が完全に断たれたあとも機体は目標へ向かい続ける。妨害の効果を、区間ごと無効にしてしまう発想である。

同じ考え方は、突入以外にも広がっている。ウクライナの軍事メディアMilitarnyiが2025年12月2日に報じたところでは、Vyriyは前線の操縦者からの要望を受けて「クルーズコントロール」と呼ぶ機能を追加した。通信が途切れたとき、機体が高度と速度を自律で保ち、安定した軌道を飛び続ける。通信が戻れば操縦者が制御を引き取り、進路を修正できる。

この機能は飛行コントローラーに組み込まれ、2025年12月1日から同社の全機種で標準になった。同社によれば、機体の価格は上がらず、コマンド1つで使えて操縦者の追加訓練も要らない。妨害による制御不能の墜落が減るほか、消費電力が下がって航続距離が伸びる効果もあるという。同社の技術者は、これでドローン全体の効率が約20%上がると見込んでいる。

突入の自動化が「当てる確率」を上げる技術だとすれば、こちらは「墜ちる機体を減らす」技術である。どちらも、通信が切れている時間を機械が埋めるという点では同じ発想に立っている。


費用も安い点が魅力である。The New Voice of Ukraineによれば、TFL-1モジュールの単価は50〜100ドルである。The Defense Postも2025年11月、強い妨害下でも最後の数メートルまで精度を保つAIアップグレードが100ドル程度で提供されていると報じた。TFL-1を積んだVyriy-10-TFL-1の機体価格は448ドルとされ、AIを積まない機体と競合する水準にある。


命中率と操縦者を育てる時間

AIモジュールの導入による効果はどうか。CSISのBondarは、従来のFPVドローンの命中率を、練度の低い操縦者で10〜15%、熟練者で30〜50%とし、自律航法を入れると70〜80%に上がると記している。

変わるのは命中率だけではない。同じ報告によれば、自律誘導を使う操縦者の訓練は30分から1日ほどで足りる。手動のFPV操縦は熟練を要し、その練度差がそのまま命中率の差として現れていた。終末誘導を機械が担えば、操縦者に求められる技量は下がる。人手が限られる側にとっては、命中率と同じくらい重い変化になる。

ただし、これらの数字の測り方は公表されていない。開発元のザ・フォース・ローCEOは、自社システムで打撃効果が2〜4倍になったとUnited24 Mediaに述べている。TFL-1の初期試験では10回の発射が全弾成功したと報じられた。一方で、実際にTFL-1を使うパイロットの一人は、実戦での20回の発射のうち成功は約半数だったとThe New Voice of Ukraineに語っている。試験と実戦、開発元と使用者では、見えている数字が違う。


標的を見分けるZIRと7種類の目標

自律化のもう一つの柱が、機械が標的を見分ける自動目標認識(ATR)である。誘導が「当てる」技術なら、こちらは「何を狙うかを機械が理解する」技術にあたる。

ウクライナのZIR Systemが開発したAIは、専用に構築したデータベースで訓練され、7種類の目標を識別する。歩兵、車両、ミニバン、トラック、防空システム、砲兵、戦車・装甲車である。目標の種類ごとに認識できる距離が違い、ウクライナ・プラウダが2024年11月に報じたところでは、自動認識が働くのは150〜800メートル、照準できる最大距離は1,000メートルだという。

CSISはより長い距離を挙げている。自動検出は1キロメートル、自律運用時は最大3キロメートル、精度は約90センチ、時速64キロ以下で動く目標に対応する、というものである。測定条件(目標の大きさ、天候、静止か移動か)が示されていないため、数百メートルから3キロメートルまで幅がある。

伸びている方向は共通している。CSISによれば、ATRの認識距離は300メートルから平均1キロメートルへ、条件がよければ2キロメートルまで伸びた。機械が遠くから標的を見分けられるほど、操縦者がロックを掛けられる位置も後方に下がる。


AI機体の配備の広がりと外国製機体の現状

AIを積んだ機体は、どこまで広がっているのか。

TFL-1はウクライナ国防省の認証を受け、2025年11月時点でおよそ20の旅団が使っている(The New Voice of Ukraine)。CSISによれば、ウクライナが2024年に調達したAI搭載ドローンは1万機である。また、The Defenderが2026年7月15日に報じたところでは、TAF IndustriesはTFLモジュールを積んだUAVを毎月数万機の単位で製造している。

外国製の機体も入っている。米Skydioは2022年以降、ウクライナにおよそ1,000機を納入した(Defense Express)。独Quantum Systemsは2024年4月にウクライナ国内へ工場と開発拠点を開設し、偵察機Vectorを年最大1,000機供給する計画を示した(同社発表)。ウクライナ・プラウダは2025年8月、同社がウクライナ国内に複数の秘密工場網を持ち、Vectorを月およそ80機生産していると報じている。

これら外国製の偵察機は、機体そのものが自律的に飛び、地図を作り、目標を追う。対する国産のFPVは、100ドルのモジュールで最後の数百メートルだけを機械に任せる。高価な自律機と、安価な部分自律機が、同じ戦場で別の役割を担っている。


40キロを飛ぶKolibriの登場

2026年7月、ザ・フォース・ローとTAF Industriesは、約40キロメートル先まで飛び、操縦者の操作なしで攻撃を完了するFPV「Kolibri 10 Advance」の認証を得た。TAFの量産機体にTFL-1を組み合わせたもので、二重帯域の通信と大容量バッテリーを備える。認証済みの機体は、国防調達庁のDOT-ChainとBrave1 Marketから発注できる(Militarnyi、2026年7月22日)。

ただし、ザ・フォース・ロー自身はこれを「Level 1の自律」と呼んでいる。操縦者は最大1,000メートル手前から目標を指定でき、時速80キロで動く車両も対象にできる。そこで機体が自律モードに切り替わり、攻撃するかどうかは人間が決める。機械が受け持つのは、ロックしたあとの最後の突入だけである。同社は自律化のロードマップを5段階で公開している。Ukraine's Arms Monitorによれば、①終末誘導、②自律爆撃誘導、③自律的な捜索と破壊、④GPSが使えない環境での完全な航法、⑤自律離着陸、という順である。稼働しているのは①だけで、機体が自分で標的を探して攻撃する③は、まだ二つ先にある。


【まとめ】AIが受け持つ範囲と人間に残る判断

ウクライナの前線でAIが担っているのは、いまのところ限定された仕事である。操縦者が最大1,000メートル手前から目標をロックし、そこから先の400〜500メートルを機体が自分で飛ぶ。マシンビジョンが対象を追い続け、通信が切れても突入を完了する。手動のFPVが映像を失って墜ちていた区間を、機械が埋めている。

同じ発想は、突入以外にも及んでいる。Vyriyのクルーズコントロールは、通信が切れているあいだ機体に高度と速度を保たせ、墜落を防ぐ。狙いは命中率ではなく、失う機体を減らすことにある。

この限定的なAIの導入が、効果と普及の両方に貢献している。追加費用はモジュール単価で50〜100ドルと安価である。操縦者の訓練も30分から1日で足り、クルーズコントロールにいたっては追加訓練も追加費用もない。安く、覚えやすく、妨害に強い。TFL-1は国防省の認証を受け、2025年に約20旅団へ入り、2026年にはTAF Industries1社がTFLモジュール搭載機を毎月数万機の単位で製造するまでになった。

自動目標認識も、機械が7種類の目標を見分け、認識距離は300メートルから1〜2キロメートルへ伸びている。ただし、AIが担っているのは目標の自動認識やロックオン後の終末誘導であり、何を標的に撃つかどうか(ロックオンするかどうか)を決めているのはいまも人間である。


出典

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